「今期も全社で一位、さすがですね」
石丸健は外資系製薬企業に勤めるエリートサラリーマン。
仕事では数々の表彰を受け、同僚たちからの信頼も厚い。常日頃から筋トレやサウナでリフレッシュすることを習慣としており、コンディションメイクにも余念がない。
その日、石丸は重要なプレゼンを終えた後、行きつけのサウナに足を運んだ。彼にとってもサウナは、忙しい日常から解放される唯一の場所だった。
石丸はロッカールームでスーツを脱ぎ、自分の身体を鏡で確認し微笑む。温かい湯に浸かり、心地よい湯気に包まれると、一日の疲れが抜け落ちる感覚を得る。湯船から出ると、汗を拭き、サウナハットを被りサウナ室へと足を運ぶ。
サウナ室の扉を開けると、いつもの熱気が彼を包む。木製のベンチに座り、目を閉じると、石丸は心の中で今日の出来事を振り返った。プレゼンは成功したが、その裏には多くのプレッシャーと努力があった。彼は自分を誇らしく感じた。
サウナの中では、すべての緊張が一時的に和らぎ、心が静まる。
数分後、石丸はサウナ室から出て、水風呂へと向かった。冷たい水が火照った身体を一気に冷やし、爽快感が全身を駆け巡る。水風呂から出ると、今度は休憩スペースへと向かい、リクライニングチェアに身を預けた。ここでのんびりと過ごす時間が、石丸にとって最高のリラックスだった。
3セットが彼のルーティンであり、再度サウナ室へ向かう。
鈴木さん、お疲れ様です
やぁ、来てたんですね
鈴木とは年も近く、病院やサウナで見かけるうちに意気投合した仲だった。
しかし、仲良しというわけではない。鈴木の会社とは競合関係であり、ライバルだが石丸には鈴木に負けない自信と実績があった。
今日のM部長の面談、大成功で来週から新規で1例処方が開始されるよ
すごいね、僕なんか門前払いで会ってさえもらえないに
気難しい先生だしね、何度も足を運んでようやく今日って感じだから
そうなんだ、僕も諦めず足を運んでみるよ
彼との会話もほどほどに、いつもルーティンを終え、石丸はいつも以上に爽快な気分でサウナを後にし、自信に満ちた笑顔で家路についた。
俺が鈴木に負けるわけがない
その翌日は週末であり、石丸は細めのスラックスにシャツを着こなし、待ち合わせ場所に向かっていた。
向かう足元はお気に入りのオーリデンの革靴、そして微かに香るジョンバローン、今日の成功を確信している。
はじめまして、彩香さん。今日は楽しみにしてました。
こちらこそ、石丸さん。私も楽しみにしてました。
石丸は彩香の明るい笑顔と会話に引き込まれ、彼女の魅力にますます惹かれていった。
彼女とはマッチングアプリで知り合い、働いている業界も同じで会話が弾み、スムーズにデートの約束を取り付けることができた。
夕食を楽しみながら、お互いの趣味について話が盛り上がる。
彩香さんも、サウナお好きなんですね
好きというか、実は・・・
・・・?
熱波師なんです・・・!
石丸の心に熱風が吹き荒れた。
つづく
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