日本の高齢化は止まらない。
内閣府によるデータでは、2019年の総人口に占める65歳以上の割合は28.4%であり、2065年には38.4%まで上昇すると予想されています。
そんな高齢化社会において、高齢者の虚弱性や障害を予防することが緊急かつ重要となっています。
その予防にサウナが効果的なのか、日本の高齢者を対象に調査した論文があり、そちらを分かりやすく解説していきたいと思います。
老年症候群と虚弱性とは
老年症候群(geriatric syndrome)
高齢者に特有の複数の健康問題を総称する用語です。
これらの症候群は慢性疾患や老化に伴う機能低下の結果として現れます。単一の疾患ではなく、複数の因子が相互に関連して発生することを特長としています。
例:転倒、骨折、認知機能障害、尿失禁、うつ病など
虚弱性(フレイル、Frailty)
高齢者における全身的な機能低下や脆弱性を指す概念です。
多くの場合、複数の慢性疾患や老化に伴う身体機能の低下が重なり合い発生しQOLの低下が懸念されます。
例:体重減少、筋力低下、疲労感など
老年症候群は虚弱性の発生との関連が示唆されていますが、老年症候群を改善することが虚弱性の改善に繋がるかは分かっていません。
この研究では遠赤外線サウナが、高齢者の虚弱度を改善することで老年症候群や共通の危険因子を改善・予防できる可能性があると仮説を立て調査しました。
遠赤外線サウナが高齢者を元気にするのか!?
参加者概要
参加者は首都圏に住む高齢者67名(男性18名、女性49名)で年齢は66~93歳で、全員が病院で外来治療を受けた経験があり、持病を持つ方も多く含まれていた。(高血圧、糖尿病、脂質異常症など)
虚弱と前虚弱は日本版心血管健康研究(J-CHS)基準を使用して診断され、前虚弱が41名、虚弱が26名に分類されました。
質問票とサウナのスケジュール
老年症候群の症状を段階的に評価することを目的とした質問票を作成し、各症状の有無を0~10の数値で評価しました。(10に近づくにつれ症状が強い)
高い数値で回答されたのは
慢性の痛み、皮膚トラブル、手足の冷え、便秘、足の浮腫など。
遠赤外線サウナのスケジュールは
60℃に維持されたサウナに15分、その後30分休憩
参加者全員サウナ前後に体重を測り、体重減少より多くの水分を補給しました。
上記のスケジュールを週2回、3か月間に渡って行い、終了後に再度質問票に回答し数値の差を検証しました。
結果
3か月間のプログラム期間中の各症状の数値評価の変化を解析したところ、四肢の冷え、脚の浮腫、歩行時の息切れ、尿失禁、慢性の痛み、皮膚トラブルに改善が見られ、老年症候群の累積数値評価も改善が確認できています。
前虚弱に分類された41名のうち7名が改善し丈夫となり、虚弱に分類された26名のうち11名が前虚弱に改善しました。
ただ前虚弱から悪化し虚弱になった方が2名いたようです。
まとめ
高齢者に対しサウナが効果的である可能性が示唆されましたね。
本来であれば、運動や食事によって改善を目指すべきところですが、身体機能の低下や体力が低下している高齢者に対し有効な手段となり得るのではないでしょうか。
ただ、この研究でデメリットとして対象群がない点が挙げられます。
サウナ有群とサウナ無群を比較することも重要ですね。またサンプルも少ないと言わざるを得ません。
すべての高齢者に適しているとは思いませんが、効果的な手段のひとつであると考えます。
つまり「高齢者はサウナで元気になる・・・かも!」です。
サウナの利用がすべての人にとって安全であるとは限りません。
健康状態や持病によってはリスクが伴う場合があります。
危険や不安を感じた方は医師に相談することをお勧めします。
Effectiveness of a far-infrared low-temperature sauna program on geriatric syndrome and frailty in community-dwelling older people
PubMed
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