第3話 熱波師!?水野彩香登場!

サウナの物語

私、水野彩香には夢がある。

その夢を追い続けているが、気がつけばもうすぐ30歳。

今は都内の製薬会社で事務員をしているけど、夢への道のりは果てしなく遠い、暗闇の中を明かりもつけず進んでいるようだ。

幼いころからサウナが身近にあった。好き、というよりも私にとっては生活の一部みたいなものだった。それに熱波師として熱波を届ける仕事もしている。熱波を送るときに感じるあの一体感。汗が噴き出し、顔を上げる人々の表情を見ながら、私は自分が小さな魔法を使っているような気持ちになる。熱波師をしている時間が、私の中で一番「生きている」と感じる瞬間かもしれない。 

サウナが好きになったのは、もちろん幼い頃から。

実家は銭湯を営んでいて、よく祖父に連れられて仕事場である銭湯へ行っていた。湯気が立ちこめる大きな浴場、パチパチと音を立てながら燃える釜の火。あの独特の匂いと、どこか包まれるような安心感。銭湯は私にとって、ただの場所じゃなかった。家そのものでもあり、思い出でもあり、心の拠り所でもあった。 私が小さな頃、祖父はいつも釜の近くで湯加減を見ていて、その横に私がちょこんと座っていた。

「この火が、みんなの体を温めるんだぞ」

なんて、祖父はいつも嬉しそうに話していたのを覚えている。銭湯はただ温まるだけじゃない。家族や地域の人たちが集まり、そこで言葉を交わし、笑い合い、時には人生の重たい話もする。そんな場所だった。 

でも、いつの間にかそんな銭湯文化も廃れていって、実家の銭湯もついに廃業してしまった。父が経営を続けていたけど、利用者は減る一方で、維持するのが難しくなったんだと思う。気がつけば、実家の銭湯はただの古びた建物としてそこに残るだけになってしまった。

 だから私の夢は、その銭湯を再建すること。

でも、現実はそんなに甘くない。お金も時間もかかるし、周囲の協力も必要だ。夢を語るのは簡単だけど、何をどうしていいのか分からない。今はとりあえず、事務員として働いているけれど、その生活にも正直、満足はしていない。毎日、会社と家を行き来しながら、どこかで「このままでいいのか?」という疑問が頭の片隅に常にある。 それでも、サウナに行けば一時的にその悩みも忘れられる。サウナ室で目を閉じ、体がじんわりと温まっていくと、心の中の迷いも溶け出すような感覚になるんだ。そして、私は自分の中の夢をもう一度思い出す。

水野
水野

銭湯を再建しよう

けれど、次の日になると現実がまた重くのしかかってくる。 銭湯を再建するためには、何が必要だろうか。資金、場所、協力者…それを一つひとつ考えるたびに、気が遠くなる。けれど、祖父の釜を守るという夢をあきらめるわけにはいかない。熱波師としての仕事を通じて、少しでも多くの人に「サウナの良さ」を伝えられたらと思っている。サウナにはただの温泉では感じられない「解放感」や「連帯感」がある。それを感じてくれた人が、いつか私の銭湯に足を運んでくれるようになったら…そんな未来を描きながら、私は今日も仕事帰りにサウナへ向かう。

サウナでの熱波を送り終わった後、ふと考える。

水野
水野

私は夢に向かって進めているのだろうか・・・?

でも諦めるわけにはいかない。祖父の思いは私が紡いでいかなければならない。

まずは協力者を探さなくては。

つづく・・・

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