サウナと腎臓の関係を調べた面白い研究があります。
腎臓は老廃物の除去や体内の水分量、電解質の調節を行っています。
サウナに入ることで大量の汗をかき体内の水分量や電解質のバランスが変化し、脱水症状を起こす可能性があります。そして腎臓は体液の調節を行っており負担がかかりそうな気がしますよね。ですが、長期的かつ高頻度でサウナに入っても将来腎臓病になるかどうかは関連がないと結論付けられています。
腎臓の主な機能
腎臓は、ヒトの体における重要な臓器の一つで、主に老廃物の排出や体液の調整を行う役割を担っています。腎臓は左右に一対あり、背中のやや下側、腰のあたりに位置しています。大人の腎臓はそれぞれ約10〜12cmの大きさで、豆のような形をしています。
老廃物の排出
腎臓は血液をろ過し、体内の老廃物や余分な水分、塩分を尿として排出します。
腎臓内にある「ネフロン」と呼ばれる小さな単位が、このろ過プロセスを担当しており、一日でおよそ150〜180リットルの血液をろ過し、その中の老廃物を取り除きます。この過程で作られる尿は約1.5リットルです。
体液・電解質のバランス調整
腎臓は体内の水分量やナトリウム、カリウム、カルシウムなどの電解質のバランスを維持します。これにより、細胞や臓器が正常に機能できる環境を保っています。例えば、ナトリウム濃度が高くなった場合、腎臓はナトリウムの排出を増やすことで血液中の濃度を調整します。
血圧の調節
腎臓は「レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系」と呼ばれるホルモンシステムを介して血圧を調節します。レニンという酵素を分泌することで血圧を上昇させる一方で、体内の水分量を調整することで血圧を維持しています。腎臓の働きが低下すると、高血圧の原因になることがあります。
赤血球の産生促進
腎臓は「エリスロポエチン」というホルモンを分泌し、骨髄での赤血球の産生を促進します。これにより、体内の酸素運搬能力が確保されます。腎臓の機能が低下すると、このホルモンの分泌が減少し、貧血を引き起こすことがあります。
ビタミンDの活性化
腎臓はビタミンDを活性化し、カルシウムの吸収を助ける役割も持っています。ビタミンDは皮膚で紫外線によって生成されますが、そのままでは活性が低く、腎臓で活性化されることでカルシウムの吸収を促進し、骨の健康を支えます。
サウナが腎臓へ与える影響
今回紹介する研究は、正常な腎機能を持つ男性2071名を対象に、サウナ入浴頻度と腎機能の関係を調べました。約25年に渡り追跡調査をしていますので信頼度は高そうです。
研究概要
まず参加者(2071名)に自己申告アンケートを実施し、サウナ入浴の頻度別にグループ分けを行いました。
グループ1:週1回
グループ2:週2~3回
グループ3:週4~7回
腎機能の検査として、推定糸球体濾過率 (GFR) と血清クレアチニン、カリウム (K)、ナトリウム (Na) 値を測定しています。
そして、長期に観察を行い各グループで腎臓病やその他の病気に発現を解析しました。
結果
各グループでGFR、クレアチニン、ナトリウムの変化は見られませんでしたが、カリウムはわずかに増加しました。
追跡期間中に慢性腎臓病と診断された方が188名いましたが、各グループでの差は認められませんでした。つまりサウナ入浴と腎臓病の関連はない、とされました。
数値に関してもほぼ変化を認めず、サウナ入浴の頻度で腎臓への影響は長期に渡り関連がないと結論付けられました。
温度と腎臓病の関係
高温が腎臓病を患う可能性を示唆する報告
例えば、中米地域で原因不明の慢性腎臓病による死亡者数が増加していることが報告されており、これは熱曝露と脱水に起因するとされています。
原因不明の慢性腎臓病の発症率が高いことが判明したその地域のサトウキビ労働者は、通常、40°Cを超える気温の中で厚着をしながら、1日数時間働いています。
また、熱ストレスと脱水症状に繰り返しさらされると、マウスでは慢性炎症と尿細管損傷が誘発し腎臓への影響が報告されています。
これらを踏まえるとサウナは腎臓に悪影響を与えそうですが、研究ではサウナ入浴が腎機能障害や将来の慢性腎臓病のリスクと関連していないことを示唆しています。
まとめ
いかかでしたか?
フィンランドでの研究なので、サウナに入らないグループがないですね。
さすがサウナ大国です。
日本人で同じことが言えるか断言はできませんが、サウナと腎臓病には関連がない可能性が示唆されました。もし現在サウナーの方が将来腎臓病を患っても原因は別にあるかもしれないですね。
今回は意外な角度からサウナの論文を紹介しました。今後も気になる論文を見つけたら紹介しますね。
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